第三送信機 VX-3 増設!

概要

愛用する第一送信機 TH-D74 は比類なき高機能を誇る V/U デュアルハンディ機だが、大きく重くて気軽に持ち運べないし、高機能であるがゆえにバッテリーが持たない。更に、イヤホンアンテナ非対応なので、電車内でのFM放送受信に不安がある。低燃費とイヤホンアンテナ非対応ゆえに、外出先で災害に遭遇したときに備えて別にラジオ単機を持ち歩く…となるとさらに重量が増えてしまう。そこで、小型軽量で目立たず、燃費がよくてイヤホンアンテナにも対応、というラジオ代わりに使うにはぴったりな VX-3 を導入した。届いた機体は想像以上に小型で、「無線運用はするつもりはないけど念のため持ち歩きたいな」というときに最適な無線機だと感じた。

導入までの経緯

2020年10月に、防災用途を兼ねる形でケンウッド TH-D74 を購入して約25年ぶりにアマチュア無線局を再開局し、その後2021年1月に HF/V/U オールモードポータブル無線機の IC-705 を第二送信機として追加購入した。これで HF から 430MHz 帯までのオールモードを、停電時でもバッテリー駆動で電波を出せるようになった。

TH-D74 は機能面では本当に優れた無線機で、以下のような長所を保っている。

  • 受信専用機ではないのに広帯域・多モードで受信できる
  • GPS 内蔵かつ ARPS 対応: どこにいるかすぐわかるし、どこにいるかを発信できる
  • ハンディ無線機としての基本機能: 2波同時受信、5W出力、漢字使用可能なメモリ
  • 最新技術対応: D-STAR、Bluetooth ヘッドセット対応

列挙すると、いかにも日本の電機メーカーが作りそうな、いわゆる「全部入り機」であることがわかる。 一方、高機能であるがゆえに、

  • 大きく重い(軽量バッテリでも315g)
  • 燃費が悪い

という欠点がある。大きすぎて、気軽に小型カバンやポケットに入れて持ち歩くことができない。Bluetooth 対応なので本体をカバンの奥底に入れておくことも不可能ではないものの、受信でも交信でも実際にはチラチラと本体を見たり操作する機会はあるので、特に「アマチュア無線の運用をするつもりはないけど一応持っていこう」みたいな使い方には向いていない。

更に 別の記事 で書いたように、この機種はイヤホンアンテナに対応しておらず、電車内でFM放送を受信しようとすると、エレメントが相当に長い SRH789 のようなアンテナが必要になる。本当に災害が発生したときなら堂々と SRH789 をフルサイズ (80cm) まで伸ばせばいいだろうけど、そんなヤツがふだんの電車内にいたら不審者確定である。そんなこともあって、もう1台小さいのがあるといいなぁ…と考えるようになった。

VX-3 の導入

そこで VX-3 の導入を検討した。 もともと小型・省エネであることから目を付けていたが、 ラジオ受信のテスト結果 により、

  • FMラジオ帯はイヤホンアンテナ対応なので、ラジオ (AM/FM) を聞く分には目立つアンテナが不要

というのも大きなアドバンテージであることに気付いたので、CQオーム のセールのときに、ついに買ってしまった。お得意様価格なので実際の購入価格は載せないが、一見さん価格でも23000円である。TH-D74(7万円くらい)に比べても安い。そして機能面でもなかなかに使える。

基本性能

V/U デュアルバンドFMハンディ機である。2波同時待ち受けはできないが、ラジオにVUサブ待ち受け、VUにVUサブ待ち受け、という形で擬似的に2波待ち受けすることができる。

送信出力は430MHz帯で1W。自分か相手のロケーションがよければ十分に電波でやりとりできる。先日の東京UHFコンテストのときもガンガン入るし交信もできた。

辛いことを挙げるとするならば、ボタンが少なくて機能を覚えるのが大変なことと、メモリ登録時に使えるのが変な記号も含めた英数字7文字までということ。ボタンの数は仕方ないにしても、メモリ登録はもう少し長いとラジオ放送をメモリしやすいのだが…と思う(「NHK-FM横浜」とか「RFラジオ日本」とかを縮めづらい)。

長所1: とにかく小さくて軽い

現行アマチュア無線ハンディ機 機能・性能比較一覧表 - tomodigi.com - を重量で並べ替えればわかるとおり、アマチュア無線機としては圧倒的に軽い。何なら手持ちの iPhone SE 第2世代 (148g) より軽い。さすがにラジオ専用機の ICF-T46 (69g) には負けるが、TH-D74 の315gの半分以下という軽さ。 TH-D74 と比べてみると、もはや同じ目的の機械とは思えないレベルで大きさが違う。

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VX-3, TH-D74, iPhone SE (第2世代) で大きさ比較

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成人男性としては小さめの手で持ったときの収まりを比較

長所2: 電池が汎用品かつ長持ち

使っている電池は富士フイルムのコンパクトデジカメと同じ NP-60 互換なので入手性が高くて安い(ロワのバッテリでも2個1320円 とかで入手可能)。3.7V 1100mAh なので大した容量はないが、カタログスペックでラジオの連続受信20時間とある。仕様からいろいろ計算すると、TH-D74, VX-3, ICF-T46 のラジオ受信時間は以下のようになる。

機種 TH-D74 VX-3 ICF-T46
受信時消費電流 (mA) 260 50 (ラジオ受信時) (未公表)
バッテリ容量 8140mWh (7.4V x 1100mAh) 4070mWh (3.7V x 1100mAh) (電池による)
受信継続時間 4.4 (計算値) 20 46 (AM/アルカリ電池)

(TH-D74 は小型バッテリ KNB-74L の値を表示)

ICF-T46 のスペックを見ると、スピーカーで46時間なのがイヤホンだと170時間になるので、単純に当てはめれば VX-3 もイヤホンで聴けば約74時間保つ、ということになる。さすがにそこまでは聴けないとしても、モバイルバッテリーから多少給電してやれば、自宅に帰るまで3日かかったとしても十分に使えると思う。

広帯域受信機能

AM放送(バーアンテナ内蔵)、FM放送(イヤホンアンテナ対応)に加えて 1.8-999.9MHz の広帯域受信が可能なので、AM/FM放送以外にも、一般的な鉄道無線(近隣だと東急田園都市線とか)・消防署活波・特定省電力無線など、災害時に役立ちそうな無線を傍受することができる。TH-D74 のように誘導無線(東京メトロ半蔵門線など)や SSB/CW まで受信できるということはないが、まぁ十分な受信性能があると思う。

ところでAM放送の受信というと、バーアンテナの感度が悪い、という記事をちらほら見る(たとえば こちら)。一方で TAKMI TV さんの VX-3紹介動画 では十分な性能だと言っていて、私も後者の意見のほうに同感である。VX-3は2007年発売の超ロングセラー機なので、もしかしたら途中でAM放送受信周りの設計が変更されているのかもしれない。

現在の使い方

前述の通り、「今日はアマチュア無線を運用するつもりはない」というときに、イヤホンと一緒に持ち歩いている。軽くて小さいので、ボディバッグのような小さい鞄にも十分に入るし、子守り時に使うランニング用バックパックの肩ベルト部分にもラクラク入る。一方で、東京へ出かけるときは誘導無線受信のために、本気で運用するときは5W出力のために、最初から受信をすることがわかっているときは Bluetooth ヘッドセットを使うために、という理由で TH-D74 と ICF-T46 のセットを持ち出すようにしている。

10月初頭から時々アマチュア無線運用したりラジオ受信に使っているこの VX-3、購入直後にバッテリをフル充電にしたあとは、なんと12月に入るまで充電する必要もなく使い続けることができた。この燃費の良さはさすがとしか言いようがない。頼れるヤツだ。