地震で無線機などが吹き飛ばないためのツール作成

概要

先月(2021年10月)、東京で震度5強を観測する地震があった。自分の住んでいる街はそれほど揺れなかったが、首都直下地震が起こったときの準備ができているのかというと、自信を持って Yes とは言いがたい。最近、防災アドバイザーの高荷智也さん (YouTube, Voicy, twitter) のビデオなどを見て、まず家の中を安全にすることが大切だと気付いた。そこでこの記事では「吹っ飛ぶと自身に危害が及んだり通信手段を失う」というリスクがある無線機に対して行った対処を紹介する。具体的には、書斎に常置しているハンディ無線機にはアクリル板を組み合わせたケースを作成してクランプでとめ、寝室枕元のポータブル無線機は取り付け専用板を作成してクランプでとめた。寝室では、そのついでに iPhone とめがねも保護できるような構造とした。

1. 書斎のハンディ機 TH-D74 を固定する

課題と解決方法の概要

私の書斎にはハンディ無線機 TH-D74 が置いてあって、いつでも市の消防署活系無線やAM/FMラジオを受信できるようになっている。しかし、もし地震が発生したら間違いなくこの無線機は吹っ飛んで、場合によっては故障し、せっかくの通信手段をひとつ失うことになるかもしれない。そこで専用のケースを自作することにした。今までは工作といえば木を使っていたけど、表示の見やすさと机上の美しさも欲しいので、練習も兼ねて初めてアクリル板を使うことにした。

トライアル1: アクリル板を自分で切ったらめちゃくちゃ大変だった

まずは 3mm のアクリル板を買ってきて切断する…んだけど、アクリルカッターでの切断が大変だった。そもそも、何回も何回も何回もキーコーキーコーと傷つけるのが大変。押さえている左腕が疲れる。その上、切断時に「パキッ」っとやろうとしたら、1枚折り損ね。更に折った後に切断面をヤスリがけするのも大変。金ヤスリを使っていてもなかなか平滑にならない。

そして、なんとかできあがったパーツを、これも初体験のアクリル接着剤で接着するんだけど、プラスチックテープでの仮止めが甘かったらしく、ほんの少しだけずれてしまった。その状態で、なんとか組み上げたケースに無線機を入れる…も、入らない。どうやら TH-D74の仕様 の「突起物」にはボタン類の1mm前後の「突起」も含まれているらしく、これと接着ズレが相まって入らなくなってしまったようだ。

もはや直したり新しい板を切り出す元気は残って折らず、修正版を一から作ることにした。

トライアル2: アクリル板の加工を依頼したら簡単だった

修正版では、以前に Magic Keyboard を尊師スタイルにするためにアクリル加工を依頼したことがあるアクリルショップはざいや さんに加工を依頼することにした。3mmは厚すぎると感じたので2mmのアクリル板を指定し、6枚依頼して送料込みで970円…安いよ! これは切断・平滑化の労力を大きく上回るよ! そして接着に関しても前回の反省を踏まえて精度高くやってみた。

完成形

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(左)クランプ固定(右)実際に運用しているところ

背面と底面の間に開けた2mmの隙間にクランプを通して固定し、無線機を入れる。電源ボタンがある左側部分はスリットになっているので、入れたまま電源の投入が可能。電源ボタンだけでなく、PTT以外のボタンは入れたままで操作でき、アクリル板なので画面表示もそのまま見える。よほどの上下動がない限り、吹き飛ぶことはないだろう。

ちなみに、完成版(トライアル2)・失敗版(トライアル1)・紙で作ったモックアップを並べると以下のようになる。トライアル1が痛々しい…。

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左から、完成版(トライアル2)・失敗版(トライアル1)・紙で作ったモックアップ

2. 枕元のポータブル無線機 IC-705 を固定する

課題と解決方法の概要

私の寝室の枕元には、ポータブル無線機の IC-705 が置いてある。アンテナが設置してあるバルコニーから同軸ケーブルを引き込めるのがここしかなく、かつ毎回毎回無線機を出し入れするのが面倒なので、ここに置きっぱなしにするようになった。IC-705 はポータブル機なのでオールモードトランシーバーとしては軽い部類だが、それでも仕様 によると重量 1.1 kg であり、これが寝ている最中に顔面直撃したら大けがは免れない。しかも同じテーブルには就寝時に iPhone とめがねも置かれるので、万一無線機がめがねを破壊した場合には致命的なダメージを蒙ることになる。

飛んでいきそうなものは固定するのがセオリーなのだが、それなりのお値段がするサイドテーブルに直接これらの機器を固定するのはちょっと気が引けるので、木材を加工した固定板を作って物品はそちらに固定し、固定板とサイドテーブルをクランプで固定する、という作戦をとることにした。

固定板の作成

サイドテーブルと積載する物品の大きさを測定し、固定板を作成する。無線機はカメラねじ(3/4インチねじ)を備えたZ雲台に載っているので、Amazon でねじを買って、雲台を裏からねじで固定できるようにする。この穴はステップアップドリルで開けたのだが、毎回狙ったところからずれてしまう…自分が下手なのか、ステップアップドリルとはこういうものなのか。まぁとりあえず現物合わせで済ませることにする。6mmちょっとしかない板ではねじが取り付けられないので、その上にさらに木板を1枚と、強度を上げるためにアルミ板を載せてエポキシ接着剤で固定する。ここから更に木ネジで固定しようと思っていたものの、エポキシ接着剤が想像以上に強力だったので、木ネジは省略した。

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(左)合板を加工し、無線機取り付け用の穴を作成(右)無線機取り付け台座の厚みと強度を確保するため、木板とアルミ板をエポキシ接着剤で固定

iPhone とめがねケース

いろいろ記録を見る限り、どんな地震でも縦方向(鉛直方向)の揺れが重力加速度 9.8m/s2 を超えた例は見当たらなかったが、横滑りして飛び出す可能性はあるかなと思ったので、それに対策することにした。ダイソーで薄いトレーを買ってきて、Lightening ケーブルが通るようにノコギリで1カ所切り取り、切った箇所の上に余っていた塩ビ板をエポキシ接着剤でくっつけて穴状に加工した。更にトレー上部にも塩ビ板を取り付けて、iPhone をここに滑り込ませた後でケーブルを接続すればこのトレーから飛びなさないようなしくみにした。最後にこのトレーを上記の固定板に強力両面テープで取り付けた。

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(左)上部はエポキシ接着剤で付けたらとれてしまったのでテープで固定(右)ケーブル通し部分

めがねケースはヨドバシで小さくてちゃんとフタがしまるやつを購入し、やはり強力両面テープで取り付け。Android 機はもはやただの時計でここから動くことはないので、やはりスタンドごと強力両面テープで取り付け。

完成形

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無線機はネジどめ、他は強力両面テープで取り付けて、その板は2箇所(右と奥)のクランプで固定した

できあがりはこちら。就寝時は iPhone を置いてから Lighening ケーブルを差し込むことで、iPhone が動かなくなる。無線運用時はボックスティッシュをちょっとどければスペースができる。他の小物(リモコンとかハンドクリームとか)は固定すると使い勝手が悪くなるので固定せず、地震発生時は吹き飛ぶの上等、ということにした。