Gawant 7 をロングワイヤー化する

要約

Gawant 7 は、電圧給電でラジアル不要、という、気軽に HF 帯に出るには最適なアンテナだが、ロッドアンテナの長さは 150cm であり、7MHz の波長40mから考えると相当の短縮率である。気軽に使える HF 帯向けのアンテナとしては Gawant のほかに RHM8bHFJ-350M がよく使われており、特に前者はロッドアンテナの代わりにロングワイヤーを取り付けることで性能を向上させられることが実験的に示されている(例1例2)。そこで、Gawant 7 でもロングワイヤー化によって、送受信性能の向上、対応する周波数帯の拡張、SWR < 1.5 となる周波数幅を拡げられないか実験したところ、ロングワイヤー化しても増えるのはノイズだけで、SWR はかえって悪化することがわかった。

ロングワイヤーを作る

同じように既存アンテナをワイヤーで拡張しようとしている方 を発見し、そこに書かれている電線をそのまま使わせていただくことにする。千石電商同じもの を売っていたので、これとミノムシクリップを購入。10m なのにすごくコンパクトでびっくり(細いので)。いろいろな長さで実験したいので、10m を [4m, 3m, 2m, 1m] に分割し、間をギボシでつなぐ。通常、ギボシは半田付けはせずに圧着するだけだが、この電線は非常に細いので、予め 2mm くらいの長さにした熱収縮チューブを通して半田付けし、被覆と熱収縮チューブをまとめて圧着することで外れにくくしてみた。

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半田付けしてから圧着する

実験しようとしてみたら…

実験前日、Gawant 7 を車に積んで子連れで公園に行ったが、なぜか全然電波を掴んでくれない。翌日、実験しようとしてもやっぱり全然マッチングしない。おかしいなと思って根元のボックスを開けてみたら…

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BNC コネクタの芯線側につながるべき黄色のケーブルが外れていた

芯線が外れてる。振動で外れたのだろうか? ケーブルの長さに余裕がないので、1.5mm くらい被覆を剥き直して半田付けしたところ、無事に電波を掴めるようになった。手作りだからこういうこともあろうか。

ワイヤーの設置

こういう配置にした。

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ワイヤーを何で支えようかいろいろ考えていたが、大した重量もないのに移動運用用のアルミポール(例えばコメット CP-45)を買うととても高いので、今回はよく小売店で「セール!!」とかいう旗を上げるのに使うのぼりポールとその土台を使うことにした。モノタロウで 5mのぼりポールのぼりポール用土台 を購入。安い! 合わせて2000円。安い。素材は書いてなかったけど、到着してから重みなどを見る限り、ただのスチールを白く塗装したものだと思う。確かに小売店ではこれを何十本も購入するのだから、万単位の価格では困るだろう。

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(左)端点はギボシに熱収縮チューブ・自己融着テープ・タイバンドという組み合わせ(右)土台、斜めにもさせるおもしろいやつ

実験

Gawant 7 にミノムシクリップを付けて実験してみた!

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Gawant 7 のロッドを最小にしてミノムシクリップでワイヤーを追加

10m 延長したとき

同調点は 4071kHz くらいが下限で、3.5MHz 帯に出るのは厳しそう。また、写真にはないが、この状態で 7MHz 帯に持って行くと逆に同調しない(バリコンを最も高周波向けに設定してもなお同調点を外れる)。

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IC-705 のバンドスコープで見ると、下限400kHz くらい

7m 延長したとき

7MHz 帯では、SWR が 3 以下になる点がまったくなくなってしまった。

6m 延長したとき

7MHz 帯では、SWR が 3 以下になる点はあるものの、1.5 以下にはならなくなった。

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6m延長時の SWR 測定結果。なんとか3以下にはなるが 1.5 以下にはならなかった

4m 延長したとき

7MHz 帯では、素のロッドアンテナとほぼ同じ幅でSWR が 1.5 以下に落ちた。4m だと庭先にのぼりポールを立てる必要はなく、ベランダの端と端で十分張ることができる。受信性能は多少上がっている気がする、程度で、わざわざのぼりポールを設営する必要性を感じない。

結論

Gawant 7 は素のまま使うのが、その気軽さを享受できるという意味でも一番いい。今度 RHM8b を買ったらそちらでロングワイヤーの実験をしてみたい。