435MHz 用6エレ八木アンテナ製作記(付録: 125MHz 用3エレ八木アンテナ)

概要

およそ四半世紀ぶりに災害対策を主目的にアマチュア無線局を再開局してみたら、昔は2エリアでも賑やかだった430MHz 帯がとても静かだった。付属アンテナよりも利得の大きな別売のハンディ用ホイップアンテナを使っても状況は変わらず、入感ギリギリの局が多い。そこで少しでも利得を稼ぐために八木アンテナを使おうと考えたが、災害対策メインなのにたくさんお金を使っては本末転倒なので、八木アンテナを自作することにした。作ってみた結果、良好なマッチングを得られた上に、ホイップアンテナではギリギリの局でも会話可能なレベルまで受信状況が改善されることを確認した。6エレにすると相当の指向性があり、おおざっぱに言って30度くらいの範囲の電波を強く受信することがわかった。

作るもの

中心周波数 435MHz の6エレ八木アンテナJAMSAT のページに載っていた500円八木アンテナの設計 を参考にして作る。ちなみに、上記記事のころと比べて銅の価格が高騰しているらしく、実際には材料費500円では作れなかった。おおざっぱに言ってブームのラワン材+アルミ丸棒500円くらい、銅丸棒が500円くらい。

準備

必要な工具・機器

  • 長さ・太さを測定する機器いろいろ: アルミ定規・直角定規・ノギスなど。
  • ドリル (例: マキタ電動ドリル): 木材にエレメントを通す穴を開けるために使う。代替手段はないので、おそらくこれが一番高い工具。
  • 3mm のドリルビット(例: このあたり): そんなに高くない。
  • ドリルガイド(後述)
  • ペンチ・金やすり・紙やすり: エレメントの切断と、切断面の面取りをするのに使う。
  • 60W はんだごて (例: goot 60W はんだごて): 銅丸棒の輻射器に同軸ケーブルを半田付けするのに使う。一般的な電子工作用のこて(20-40W)では銅を温めるのに熱量不足なので、最低でも60Wのこてが必要。
  • ニッパーもしくはリッパー: 同軸ケーブルの切断と被覆剥きに使う
  • SWR 計 (例: SX27P): できあがったアンテナが想定通りにマッチングしてるかどうかの確認に使う。マッチングがうまくとれない高 SWR 状態で使うと無線機のファイナルを壊してしまうかもしれないので、必ず測定しよう。

工具全般はホームセンター・ヨドバシ・Amazon で購入。SWR計は無線ショップ(CQオーム は地元だよ、よろしくね!) で買おうと思ったけど売り切れだったので、Amazon マーケットプレイスの無線ショップで購入。

材料

  • ラワン材(910x24x14)1本: ブーム用
  • アルミ丸棒(3mm 径で定尺 995mm のもの)3本: 反射器・導波器用
  • 銅丸棒(上に同じ)1本: 輻射器用(アルミでは半田がのらず同軸ケーブルを接続できないため、輻射器のみ銅を使用)
  • はんだ適量
  • 両端 SMA-p の同軸ケーブル: わざわざ素の同軸ケーブルと SMA-p コネクタを買ってきて半田付けするのは手間なので、これを買ってきて真ん中で切って片側だけ使う。アンテナ2本作るときは両方とも使える(実際使った)。

木材と金属棒は近所のホームセンターで購入。こういうながーいものは通販で買うと送料のほうが高くつく。両端 SMA-p のケーブルは千石電商の通販で購入。秋葉原にはまだ行けない…。

工程

エレメントを作る

まず、アルミ丸棒・銅丸棒を規定の長さ(プラス1-2mm)に切断する。ペンチで押しつぶされた切断面をやすりで面取りする(この面取りで規定の長さにする)。このエレメントはラワン材の14mmを貫くようにして差し込むので、その部分がわかるようにマーキングする。

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(左)切断直後(右)面取り後

銅丸棒は参考記事通りの場所で曲げる。ちょうどラワン材の一方が14mm厚なので、この幅部分に銅丸棒を宛がって曲げると、だいたい指示通り13mm くらいの幅で曲げられる。ここまででエレメントができあがり。

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ブーム(穴開け前)と、切断したエレメント6本を並べてみた

ラワン材に穴開けしてブームを作る

ラワン材に垂直の穴を7つ開ける(輻射器のみ2つ穴)。

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穴開けポジションはこちら

きちんと垂直がとれていないと、不格好な上にマッチングに影響すると思われるので、ドリルガイドを使う。ただし、市販のドリルガイドは4mm用が一番小さいので、何かしらの工夫が必要。

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ドリルガイドはサイズごとに交換可能な金属部品とそれを差し込むプラスチック部品からなる

最初はドリル側にメンディングテープを巻いて4mmにしてみたが、摩擦ですぐに外れてしまった。うーんどうしようと思ったが、435MHz 用はもう4mmのままで作ってしまった。このあと125MHz用を作ったときは、このツイート を参考にして、内径3mm・外径4mm のアルミパイプを買ってきて、切断→やすりがけしてガイドパイプを作った。

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アルミパイプ(内径3mmで0.5mm厚=外径4mm)

穴開け完了したブームはこちら。

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穴開け完了時のブーム

エレメントの取り付け

まず、輻射器だけをブームに挿入し、参考記事通りの場所に同軸ケーブルを半田付けする。今回使ったケーブルは 1.5D 相当の細いケーブルだったので、剥いてみたらなんと芯線も撚り線でびっくりした。ニッパーでやっていたら編線がズタズタ切れてしまったので、恥を忍んでケーブルリッパーを使って剥いた。

そして半田付け。最初に同軸側にこんもりと半田を持っておき、次にその同軸ケーブルを輻射器に押し当てながら、輻射器を半田で熱していけば、輻射器の温度が半田の融点に達したところでデロっと半田が溶けて接続される。

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半田付け完了した輻射器

輻射器ができあがればほぼアンテナは完成。導波器・反射器は規定の位置にただ差し込むだけ。これで完成!

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完成したアンテナをリグ (TH-D74) と並べてみた

使ってみた感想

  • 指向性すごい。厳密に測定していないが、だいたい30度くらいの幅で59が11になるくらいの勢い。
  • SRH771 と比べると、31くらいのが57 くらいにはなる
  • SWR は無調整状態でも433.80MHz で 1.2 以下(SX27Pの測定下限)、438.50MHz で 1.5 と、十分実用に値する数値を得られた

作ってみた感想

これを中高生のときに作れるか、というと、技術的には作れても、工具が高いので作れなかっただろうと思う。

追記: 125MHz 用も作ってみた

430MHz 帯に加えて聞こうとしたのがエアバンド。羽田を出入りする航空機の無線は(相手が上空にいるのが効くので)ホイップアンテナでも十分に聞こえるが、羽田の地上管制が聞こえない。これが残念だったので、今度は 125MHz 用(波長2.4m)のを作ってみた。435MHz 用との違いは以下の通り。

  • 参考記事にある 145MHz 用(波長2m)の設計図を流用。送信するわけではないのでマッチングはそれほど厳密でなくてもよいと考え、アバウトに各要素(エレメント長・エレメント間隔を) 2.4m/2m = 1.2倍に延長
  • ブーム長はラワン材の長さ 910mm を超えられないので3エレとする
  • エアバンドに飽きたときに備えて 145MHz 用のエレメント穴もついでに開けておく(切断・半田付けと違って穴開けは屋外での大規模作業が必要なので二度手間は避けたい)
  • 全エレメントが長さ 1m (995mm) を超えてしまって定尺のアルミ丸棒・銅丸棒を使うことができないため、以下のように対処
    • 輻射器は定尺の銅丸棒2本の端を斜めにヤスリがけした上で半田付けして連結し、熱収縮チューブで覆って補強
    • 反射器・導波器は園芸用アルミ線(3mm)を必要な長さに切断し、コロコロと転がしてだいたい直線にして使用

組み立ててみたのがこちら。

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(上)125MHz 用(下)435MHz 用

まず、とにかく大きくて取り回しが大変。ボクのひみつ基地(天井高1400mmの小屋裏収納)では、ちょっと振り回しただけで壁・もの・天井の照明にエレメントが当たってしまう。また、ちょっと強めに振り回すと、アルミ線でできたエレメントが歪んでしまうという怖い状態に。受信感度の観点では、確かに受信できる飛行機の数は多くなったが、羽田空港ローカルの無線(クリアランス・グラウンド・タワー)までは聞こえなかった、残念。予定通り、時間のあるときに 145MHz 用に改造しようと思う。